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オンプレLLMで業務資料を整理するPoC:外部AIに出しにくい委員会資料を評価指標と要確認箇所に分ける

外部AIに出しにくい業務資料を、オンプレミス環境で動作するLLMでどこまで整理できるのか。本記事では、行政事務局の委員会資料作成フローを一例に、委員意見を評価指標・要確認箇所へ整理し、生成AIに任せる工程と人が確認すべき工程を切り分けるPoCを取り上げます。

見出し

はじめに:外部AIに出しにくい業務資料をどう整理するか

ChatGPTをはじめとする外部AIサービスは、文章の要約や整理に非常に便利です。一方で、行政機関の委員会資料、医療機関の内部資料、企業の会議資料、顧客対応記録、監査資料など、外部AIにそのまま投入しにくい業務資料も少なくありません。

こうした資料を扱う場合、単に「AIに読ませて要約する」だけでは不十分です。資料の中に含まれる意見や論点を、どの評価指標や業務上の判断材料に接続するのか。どこまでをAIやルール処理で整理し、どこからを人が確認・判断すべきなのか、その切り分けが重要になります。

今回のPoCでは、行政事務局の委員会資料作成フローを一例として、委員意見を評価指標や要確認箇所に整理し、次回委員会用資料案の素材として扱いやすい形にすることを試みました。

本記事は完成システムではなくPoCの紹介

最初に明確にしておきたいのは、本記事で紹介する内容は、完成版の業務システムではないという点です。ここでいうPoCは、業務フローの一部を切り出し、生成AIに任せられる工程と、人が確認・判断すべき工程を見極めるための検証モデルです。

PoCとは:
PoCは「Proof of Concept」の略で、本格導入の前に、特定の業務や工程を小さく切り出して実現可能性を確認する検証です。本記事では、業務システムを完成させることではなく、外部AIに出しにくい資料を対象に、生成AIが支援できる工程と人が確認すべき工程を見極めることを目的としています。

今回のPoCでは、生成AIに次回委員会資料を完成させることを目的にしていません。次回資料案を作成するのは、あくまで事務局担当者の業務です。生成AIの役割は、委員意見を構造化し、評価指標や政策領域との接続候補を整理し、判断が難しい箇所を「要確認」として分離することにあります。

つまり、目指しているのは完全自動化ではありません。確定的に扱えるものは資料案の素材として整理し、判断が難しいものは処理を止めずに、理由付きで人手確認に回す。そのような、人と生成AIの役割分担を前提にした検証です。

本記事の位置づけ:
本記事は、完成版の業務システムではなく、外部AIに出しにくい業務資料を対象に、生成AIに任せる工程と人が確認・判断すべき工程を切り分けるPoCを紹介するものです。

行政事務局の委員会資料を一例として扱う理由

今回、題材として行政事務局の委員会資料作成フローを扱ったのは、委員意見、評価指標、ロジックモデル、次回資料案の関係が比較的明確であり、生成AIに任せる工程と人が確認すべき工程を切り分けやすいためです。

委員会資料の作成では、複数の委員意見を読み解き、それぞれの意見がどの評価指標や政策領域に関係するのかを整理する必要があります。また、既存の評価シートに接続できる意見もあれば、指標との対応が明確ではなく、事務局側で確認すべき意見もあります。

この構造は、行政分野に限ったものではありません。社内会議資料、顧客対応記録、監査資料、医療・介護関連資料、士業の相談記録などでも、外部AIに出しにくい資料を読み解き、業務上の判断材料に整理する場面があります。

そのため、本記事では行政事務局の資料作成フローを一例として扱いつつ、より一般的な「外部AIに出しにくい業務資料を、オンプレLLMでどのように整理するか」という観点から、今回のPoCを位置づけます。

今回のPoCで対象にした業務フロー

今回のPoCでは、厚生労働省が公表している第94回がん対策推進協議会の資料を題材にしました。具体的には、参考資料8「第4期がん対策推進基本計画中間評価 委員意見一覧」をもとに、委員意見をPoC用の入力データとして整理しています。

同ページには、中間評価に関する資料、評価指標一覧、コア指標一覧、ロジックモデル、測定値判定一覧なども掲載されています。委員意見を単独で読むだけではなく、評価指標や政策領域との関係を整理し、次回資料案の検討材料として扱うには、こうした周辺資料との接続が重要になります。

なお、本記事の作成時点(2026年6月8日)では、第94回がん対策推進協議会の議事録はまだ公表されていません。そのため、今回のPoCは、議事録を前提にした後追い整理ではなく、公表済みの会議資料、委員意見一覧、評価指標等をもとに、資料作成の前段階で必要となる論点整理や要確認箇所の抽出をどこまで行えるかを確認するものです。

入力データについて:
今回のPoCでは、公表資料をそのままLLMに投入するのではなく、委員意見や評価シート等をあらかじめ表形式に整理した入力データを用いています。実務でも、担当者の手元にあるExcel等の業務データを起点に、生成AIやルール処理に渡しやすい形へ整える前処理が重要な検討事項になります。
また、入力データに必要な評価指標が不足している場合、後続の分類結果にも影響するため、入力マスターの整備状況を確認しながら処理することが重要になります。
なお、入力評価シートの整備にあたっては、国立がん研究センター がん情報サービスで公開されている「第4期がん対策推進基本計画 ロジックモデル/評価指標(都道府県単位)」(2026年4月23日更新)のデータシートも参照し、PoC用の入力データとして必要な範囲を整理・加工しています。

本PoCで対象にしたのは、委員意見そのものを要約する工程ではありません。委員意見を、評価指標や政策領域、要確認箇所に整理し、事務局担当者が次回資料案を検討する際の素材として扱いやすくする工程です。

委員意見を次回資料案に反映する前の整理

委員会資料を作成する際には、委員から出された意見をそのまま次回資料案に転記すればよいわけではありません。意見の背景には、どの評価指標を見ているのか、どの政策領域に関係するのか、既存の評価シートに反映できるのか、といった整理が必要になります。

たとえば、ある意見が特定の評価指標に明確に対応している場合は、その指標に接続したうえで、次回資料案の素材として扱いやすくなります。一方で、意見の趣旨は重要であっても、既存の評価指標や評価シートとの対応が明確ではない場合もあります。このような意見まで無理に分類してしまうと、後工程で誤った整理につながるおそれがあります。

そこで今回のPoCでは、委員意見を一律に自動分類するのではなく、既存の評価シートや指標に接続できるものと、人が確認すべきものを分ける設計にしました。AIやルール処理で確定できるものは資料案の素材として整理し、判断が難しいものは「要確認」として分離します。

この整理により、事務局担当者は全件をゼロから読み直すのではなく、接続済みの意見と確認が必要な意見を分けて確認しやすくなります。生成AIの役割は、事務局の判断を置き換えることではなく、判断に入る前の整理作業を支援することにあります。

評価指標・政策領域・要確認箇所に分ける考え方

今回のPoCでは、委員意見を大きく三つの観点で整理しました。第一に、評価指標や評価シートに接続できる意見です。これは、既存の指標や評価項目との対応が比較的明確であり、次回資料案の素材として扱いやすいものです。

第二に、政策領域や資料上のセクションには対応しそうだが、評価指標との接続には確認が必要な意見です。このような意見は、ルールベースで暫定的に整理できる場合がありますが、最終的には人が確認する必要があります。

第三に、AIやルール処理だけでは評価指標・評価シートとの対応を判断しきれない意見です。これらは無理に分類せず、理由付きで「要確認」として残します。今回のPoCでは、このような判断困難な箇所を処理の失敗として扱うのではなく、事務局担当者が確認すべき論点として分離することを重視しました。

この考え方は、行政事務局の委員会資料に限りません。社内会議資料、顧客対応記録、監査資料、医療・介護関連資料などでも、外部AIにそのまま投入しにくい資料を扱う場合には、AIに任せる工程と、人が確認する工程を業務フローの中で分けておくことが有効だと考えています。

生成AIに任せる工程と、人が確認する工程を切り分ける

実行環境について:
本PoCでは、公表資料を対象とした設計方針や検証観点の整理には、ChatGPTなどの外部AIも壁打ち相手として併用しました。一方で、実際のファイル処理、CSV化、分類結果の統合、Excel・Markdown・CSV等の出力生成は、オンプレミス環境で動作するLLMとルール処理・スクリプトを組み合わせて実施しています。また、PoC用スクリプトの作成・修正についても、VS Code 上の Cline からオンプレミス環境で動作するLLMを利用し、ファイル処理や成果物生成に関わる本流の作業は、外部AIサービスに処理対象データを投入しない形で進めました。なお、モデル選定、実行環境、プロンプト設計、前処理・後処理の詳細は本記事では扱わず、ここでは業務フロー上の切り分けと出力結果に焦点を当てています。

今回のPoCで重視したのは、生成AIに業務全体を任せることではなく、業務フローの中で生成AIが支援しやすい工程を切り出すことです。

委員会資料の作成には、単なる文章整理だけではなく、制度理解、政策領域の把握、評価指標との対応関係、委員会運営上の判断、表現の調整などが含まれます。少なくとも今回のPoCでは、これらをすべて生成AIに任せるのではなく、整理支援の工程に対象を絞りました。

一方で、大量の委員意見を読み込み、既存の評価指標や政策領域との関係を整理し、判断が難しい箇所を要確認として分離する工程は、生成AIやルール処理、スクリプトによる支援効果が見込める領域です。

次回資料案を作成するのは事務局担当者

今回のPoCでは、次回委員会用資料案を生成AIに完成させることは目的にしていません。次回資料案の構成を決め、どの意見をどのように扱うかを最終判断し、組織内で確認可能な表現に整えるのは、あくまで事務局担当者の業務です。

そのため、生成AIの出力をそのまま最終資料として扱うのではなく、資料作成の前段階で使える素材として整理することを目指しました。具体的には、委員意見を評価指標や政策領域に接続し、次回資料案を検討する際に参照しやすい形に整えます。

この考え方により、生成AIを「資料を自動作成する道具」としてではなく、「事務局担当者が判断しやすくするための整理支援」として位置づけることができます。

生成AIは焦点整理と要確認箇所の分離を支援する

今回のPoCで生成AIやルール処理に担わせた役割は、焦点を当てるべき意見や論点を整理し、人が確認すべき箇所を見えやすくすることです。

今回のPoCでは、既存の評価指標や評価シートに接続できるものは、確定済み接続として整理しました。一方で、対応関係が不明瞭なものや、AIだけでは判断しきれないものは、無理に分類せず「要確認」として分離しています。

このようにすることで、処理全体を途中で止めるのではなく、整理できるものは整理し、判断が難しいものは理由付きで残すことができます。事務局担当者は、全件をゼロから確認するのではなく、要確認箇所に重点を置いて確認しやすくなります。

今回のPoCは、AIに判断を委ねるためのものではありません。人が判断するために必要な材料を、オンプレLLMとルール処理でどこまで整理できるかを確認するための検証です。

実務観点:
今回のPoCでは、生成AIを最終判断の代替ではなく、判断に入る前の整理を支援するものとして位置づけています。委員意見を評価指標・政策領域・要確認箇所に整理し、担当者が次回資料案を検討しやすくすることを目的にしています。

資料案生成工程で作成した資料案の素材

ここでは、前工程までに整理した委員意見と評価指標の接続結果をもとに、要確認フラグ付きの資料案素材を生成する工程を「資料案生成工程」と呼びます。

資料案生成工程では、次回委員会用資料案を作成するための素材を生成しました。

ここでいう「資料案の素材」とは、完成版の委員会資料そのものではありません。前工程までに整理した中間データをもとに、委員意見をどの評価指標や政策領域に接続できるのか、どの意見を要確認として扱うべきなのかを、担当者が確認しやすい形に整理したものです。

今回のPoCでは、Excel資料、Markdown資料案、確定済み接続一覧CSV、要確認意見一覧CSV、資料生成レポートを出力しました。これにより、処理結果を一覧で確認するだけでなく、後続の人手確認や資料化作業につなげやすい形にしています。

Excel、Markdown、CSV、レポートの形で出力

資料案生成工程の出力物は、大きく分けて四つあります。

第一に、次回委員会用資料案の素材として使うExcel資料です。Excelでは、全体の集計結果、確定済み接続一覧、意見単位のサマリー、要確認意見一覧、要確認優先度別の一覧を確認できるようにしました。

第二に、Markdown形式の資料案です。これは、Excelだけではなく、文章ベースで処理結果を確認し、報告資料や説明資料への転用をしやすくするための出力です。

Markdown資料案では、単なる集計値だけでなく、担当者が確認すべき要確認意見を、優先度別に確認できるようにしています。下のアコーディオンでは、その一部を記事上で確認しやすいカード形式に再構成しています。
クリックしてMarkdown資料案の要確認リスト例を展開
資料案の総括
総意見数:190件
確定済み接続行数:514行
要確認行数:50行
確定済み接続を含む意見数:140件
要確認を含む意見数:50件
確定済み・要確認の両方を含む意見数:0件

要確認意見(high 優先度)の例

high 優先度:20件。AIやルール処理だけでは評価指標・評価シートとの対応を判断しきれないため、担当者による確認が必要な意見です。

意見番号:086
出所セクション:◆がんの2次予防(がん検診)

意見本文:
小児・AYA世代に対する検診体制については、こぼれ落ちる人が出ないよう、国として一体的に対策を講じる必要がある。小児がん経験者は、科学的にも二次がんのリスクが高いことが報告されている。さらに、遺伝によるリスクも5~15%あることが明らかになってきた。しかし、現状では長期フォローアップ体制は十分とは言えず、さらに自治体や職域検診の対象年齢からも漏れてしまう世代が存在する。自治体の取り組みも見られるが、自治体任せでは地域間格差が広がる一方である。国として、誰一人取りこぼさない小児・AYA世代の検診体制を整備することが求められる。

人手確認ノート:
提示された候補評価シートの指標(がんの年齢調整死亡率)は、意見で求められている小児・AYA世代の検診体制整備というプロセス指標と直接対応していないため。

意見番号:110
出所セクション:◆人材育成の強化

意見本文:
中間アウトカムとなるがん専門医療人材の増加は評価できる。人材育成の強化に関しては、アウトプット指標の3分野で研修参加者減少によるC評価となっている。研修会には、多忙の中、労働時間外あるいは、自費で参加する受講者も多い。研修会を受講する職員への費用の助成を行っている機関へのインセンティブや評価が必要ではないか。また、モチベーションの維持のために、専門人材への適正な評価が必要。

人手確認ノート:
候補評価シートが提供されていないため、適切な指標との関連付けを人工的に判断することができない。

要確認意見(low 優先度)の例

low 優先度:30件。政策領域や資料上のセクションには暫定的に整理できるものの、最終的な妥当性確認が必要な意見です。

意見番号:012
出所セクション:◆がんの1次予防

意見本文:
中間アウトカムのデータソースが第3次健康日本21であり2029年に中間評価されるならば、がん対策の指標としては使えないのではないでしょうか(別途、国民健康栄養調査ではかるのでしょうか)

暫定政策領域:全体

意見番号:172
出所セクション:◆患者・市民参画の推進

意見本文:
がん対策の施策を推進する自治体への市民参画の推進と同等、あるいはそれ以上の重要性がありながら、当の自治体の職員の入れ替わりが多く理解が深まらない課題がある。市民の暮らしに直結する知識習得の機会(がん予防学会、がんサポーティブケア学会など)に参加した職員割合などを指標化することで、領域の理解を深めて着実に施策に反映することが可能となり、全国の取り組みの底上げにつながるのではないか。

暫定政策領域:全体

※ 実際のMarkdown資料案では、このほかにも確定済み意見、要確認意見、次ステップを含め、担当者が確認しやすい単位で整理しています。

第三に、確定済み接続一覧CSVと要確認意見一覧CSVです。CSVとして分けておくことで、後続工程での再集計、フィルタリング、人手確認結果の反映に利用しやすくなります。

第四に、資料生成レポートです。これは、出力ファイルの生成状況や主要な集計値を確認するためのログ的な資料です。

このように、単一の資料だけを出力するのではなく、Excel、Markdown、CSV、レポートを分けて生成することで、担当者が確認する場面、後続処理で再利用する場面、検証結果を組織内で共有・説明する場面に対応できるようにしています。

Excel資料の6シート構成

資料案生成工程で生成したExcel資料は、次の6シートで構成しています。

  • 意見サマリー
  • 反映済み接続一覧
  • 反映済み意見サマリー
  • 要確認意見一覧
  • 要確認優先度ハイ
  • 要確認優先度ロー

「意見サマリー」では、総意見数、確定済み接続行数、要確認行数、high優先度・low優先度の件数など、処理結果の全体像を確認できます。

「反映済み接続一覧」は、評価指標や評価項目との接続が確定済みと扱える行を一覧化したものです。一方、「反映済み意見サマリー」では、接続行単位ではなく、意見番号単位で集約した結果を確認できます。

「要確認意見一覧」では、人が確認すべき意見を一覧化しています。さらに、「要確認優先度ハイ」と「要確認優先度ロー」に分けることで、どの意見から優先的に確認すべきかを把握しやすくしています。

この構成により、単にAIの出力結果を並べるのではなく、担当者が確認・判断しやすい単位に分けて資料化できるようにしました。

190件の委員意見を、514行の確定済み接続と50行の要確認に整理

資料案生成工程では、前工程までに整理した中間データをもとに、次回委員会用資料案の素材としてExcel資料を生成しました。まず、処理結果の全体像を「意見サマリー」シートで確認できるようにしています。

資料案生成工程で生成したExcel資料の意見サマリーシート。190件の委員意見を514行の確定済み接続と50行の要確認に整理した結果。
資料案生成工程で生成したExcel資料の「意見サマリー」シート。190件の委員意見を、514行の確定済み接続と50行の要確認に整理した結果を確認できる。

主要な集計結果

今回のPoCでは、190件の委員意見を対象に、評価指標や評価項目との接続結果を整理しました。確定済みとして扱える接続は514行、要確認として分離した行は50行です。また、要確認項目は high 優先度20件、low 優先度30件に分けています。

意見数と接続行数を分けて扱う理由

ここでの「確定済み接続行数」は、意見数そのものではなく、委員意見と評価指標・評価項目との接続行数です。1つの意見が複数の評価指標や評価項目に接続される場合があるため、総意見数190件に対して、確定済み接続行数は514行となっています。

行政資料や委員会資料では、1つの意見が複数の評価指標や論点にまたがることがあります。そのため、単純に「意見数」だけで進捗を把握するのではなく、評価指標・評価項目との接続行数も別に管理する必要があります。

要確認箇所を分離し、人手確認に回す設計

今回のPoCでは、評価指標や評価シートに接続できるものだけを出力して終わりにするのではなく、判断が難しいものを「要確認」として分離する設計にしました。

業務資料を扱う場合、すべての意見や論点が既存の評価指標にきれいに接続できるとは限りません。むしろ、重要な意見ほど、複数の政策領域にまたがっていたり、既存の指標では十分に受け止めきれなかったりする場合があります。

そのような意見を、AIやルール処理で無理に分類してしまうと、後工程で誤った整理につながるおそれがあります。一方で、判断できない箇所があるたびに処理全体を止めてしまうと、資料作成の効率化にはつながりません。

そこで、今回のPoCでは、処理できるものは処理し、判断が難しいものは理由付きで「要確認」として残す方針にしました。これは、生成AIの出力を盲信するのではなく、人が確認すべき箇所を明確にするための設計です。

設計上のポイント:
AIやルール処理だけでは判断しきれない箇所を、処理失敗として扱わず、「要確認」として理由付きで残すことを重視しました。処理できるものは整理し、判断が難しいものは人手確認に回すことで、業務フロー全体を止めずに進められます。

high優先度20件とlow優先度30件

資料案生成工程では、要確認として分離した50行を、high優先度20件とlow優先度30件に分けています。

high優先度は、評価シートや評価指標との対応が不明瞭で、AIやルール処理だけでは十分に判断できないものです。これらは、担当者が内容を確認し、必要に応じて資料上の扱いを検討する必要があります。

low優先度は、資料上のセクションやルールベースの条件から暫定的に整理できるものの、最終的な妥当性確認が必要なものです。完全に未整理というわけではありませんが、担当者が確認したうえで採用・修正・保留を判断する前提で扱います。

このように要確認箇所にも優先度を付けることで、すべての要確認項目を同じ重さで扱うのではなく、どこから確認すべきかを判断しやすくしています。

処理を止めず、要確認として残す意味

今回のPoCで重要なのは、AIが判断できない箇所を「失敗」として扱わないことです。

実務では、判断が難しい意見や、既存資料との対応が曖昧な意見が出てくることがあります。その場合に、処理全体を止めるのではなく、要確認として分離し、理由とともに後続工程へ渡せるようにしておくことが重要です。

これにより、担当者は、確定済みとして扱える接続結果を確認しながら、判断が必要な箇所に集中しやすくなります。人手確認は、AI処理の前に立ちはだかるブレーキではなく、最後に品質を担保するための確認工程として位置づけられます。

この設計は、行政事務局の委員会資料に限らず、社内資料、監査資料、顧客対応記録、医療・介護関連資料など、外部AIに出しにくい業務資料を扱う場面でも応用しやすい考え方です。

入力データの整備が、要確認箇所の判定に影響する

opinion_no=015 が示す入力マスター整備の重要性

今回の再確認では、opinion_no=015 が、入力データ整備の重要性を示す例になりました。この意見は、若い世代への飲酒啓発に関する内容であり、本来は indicator_no=111208「中学生・高校生の飲酒者の割合」と関連する意見でした。

しかし、当初の入力評価シートには indicator_no=111208 が含まれていなかったため、処理上は評価シートとの接続ができず、要確認として分離されていました。その後、指標マスターに基づいて111208を入力評価シートに補完したところ、opinion_no=015 は要確認から外れ、111208への確定済み接続として整理されました。

この結果は、生成AIやルール処理の精度だけでなく、入力マスターの整備状況が処理結果に大きく影響することを示しています。必要な指標が入力データ側に存在しなければ、AIやルール処理は適切に接続できず、要確認として残す設計になります。一方で、入力データを補完すれば、同じ意見でも確定済み接続として扱える場合があります。

意見単位・接続行単位・要確認単位を分ける必要性

委員意見を業務資料として整理する場合、「意見が何件あるか」だけでは十分ではありません。どの意見がどの評価指標や評価項目に接続されたのか、どの意見に要確認箇所が残っているのかを、別の粒度で管理する必要があります。

今回のPoCでは、190件の委員意見を対象にしつつ、確定済み接続行数は514行、要確認行数は50行となりました。これは、1つの意見が複数の評価指標や評価項目に接続される場合があるためです。

また、今回のopinion_no=015のように、入力データの補完によって、当初は要確認だった意見が確定済み接続に移る場合もあります。そのため、単純に意見単位で「処理済み」「未処理」と分けるのではなく、接続行単位、意見単位、要確認単位を分けて整理し、後から検証できるようにすることが重要になります。

この粒度の違いを明確にすることで、担当者は、確定済みとして利用できる情報と、追加確認が必要な情報を分けて扱いやすくなります。生成AIを業務に組み込む場合でも、このような粒度管理を行うことで、人が確認すべき箇所を把握しやすくなると考えています。

このPoCが示す、業務フロー分析型の生成AI活用

今回のPoCから見えてくるのは、生成AI活用では、いきなり業務システムを構築する前に、まず業務フローを整理することが重要だという点です。

どの資料を外部AIに出せるのか。どの資料はオンプレミス環境で扱うべきなのか。どの工程を生成AIやルール処理に任せられるのか。どこは人が確認し、最終判断すべきなのか。こうした切り分けを行わないままAI導入を進めると、期待した効果が出にくくなります。

今回の検証では、委員意見を評価指標・政策領域・要確認箇所に整理する工程を切り出しました。これは、完成版のシステムを作る前に、業務フローのどの部分にAIを使うと効果があるのかを確認するための小さなPoCです。

システム導入の前に、AIに任せる工程を見極める

生成AIを業務に導入しようとすると、すぐに「どのツールを使うか」「どのシステムを導入するか」という話になりがちです。しかし、実際にはその前に、業務フローのどこにAIを入れるべきかを見極める必要があります。

今回のPoCであれば、次回資料案を作成する工程そのものをAIに任せるのではなく、その前段階にある委員意見の整理、評価指標との接続、要確認箇所の分離を対象にしました。これにより、人が確認・判断する工程を残しながら、AIが支援しやすい部分を切り出すことができます。

このような切り分けを行うことで、AIに過度な判断を任せることを避けながら、資料作成や確認作業の負荷を下げる可能性を検証できます。

業務フロー整理・PoC設計・構成レビューへの応用

今回の題材は行政事務局の委員会資料ですが、考え方自体は他の業務にも応用できます。社内会議資料、監査資料、顧客対応記録、医療・介護関連資料、士業の相談記録など、外部AIに出しにくい資料を扱う場面では、同じように「AIに任せる工程」と「人が確認する工程」の切り分けが必要になります。

企業内であれば、本記事でいう評価指標は、KPI、管理指標、成果指標、監査観点などに置き換えて考えることができます。重要なのは、会議資料や顧客対応記録を単に要約することではなく、業務上の判断材料となる指標や確認観点に接続することです。

その意味で、今回のようなPoCは、単なる技術検証ではなく、業務フロー分析の一部でもあります。業務全体を一気にシステム化するのではなく、まずは対象資料、入力データの整備状況、処理工程、確認ポイント、責任分界を整理し、小さな単位で検証することが現実的です。

応用の方向性:
このような考え方は、業務システムの構築そのものよりも、業務フローの整理、生成AIに任せる工程と人が確認すべき工程の切り分け、PoC設計、構成レビュー、内製化に向けた助言といった領域で活かしやすいものです。

まとめ:AIに資料を完成させるのではなく、確認すべき論点を整理させる

本記事では、外部AIに出しにくい業務資料を、オンプレミス環境のLLMでどこまで整理できるかを検証したPoCを紹介しました。

題材としたのは、行政事務局の委員会資料作成フローです。委員意見を評価指標・政策領域・要確認箇所に整理し、次回資料案を作成する前段階の素材として扱いやすい形にすることを目指しました。

資料案生成工程では、190件の委員意見を対象に、514行の確定済み接続と50行の要確認項目に整理しました。また、要確認項目を high 優先度20件、low 優先度30件に分けることで、人が確認すべき箇所を把握しやすくしています。

また、今回の検証では、入力評価シートに必要な指標が不足している場合、関連する意見が要確認として残ることも確認できました。入力データを補完することで、当初は要確認だった意見が確定済み接続に移るケースもあり、生成AI活用ではモデルやプロンプトだけでなく、入力マスターの整備も重要であることが分かります。

オンプレLLMで支援できること

オンプレLLMは、外部AIに出しにくい資料を扱う際の選択肢になります。ただし、少なくとも今回のような業務資料整理のPoCでは、LLMを導入すること自体よりも、業務フローの中でどの工程をAIが支援できるのかを見極めることを重視しています。

今回のPoCでは、委員意見の構造化、評価指標や政策領域との接続、要確認箇所の分離、優先度付け、ExcelやCSVとしての出力を行いました。これらは、担当者が次回資料案や業務上の検討資料を作成する前段階の整理作業を支援するものです。

人が確認・説明する前提で扱う領域

一方で、今回のPoCでは、次回資料案をどのように構成するか、どの意見をどのように扱うか、どの表現で組織内外に説明するかは、人が確認・判断する前提で扱っています。

生成AIは、判断材料を整理することはできます。しかし、少なくとも今回のような行政資料・業務資料の整理では、最終的な判断、説明責任、表現調整、関係者との合意形成は、人が確認する前提で設計するのが現実的だと考えています。

そのため、今回のPoCで重視したのは、AIに資料を完成させることではなく、確認すべき論点を整理させることです。処理できるものは整理し、判断が難しいものは要確認として残す。このような設計により、生成AIを業務の中で現実的に活用しやすくなると考えています。

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